骨盤底領域疾患(直腸肛門疾患・骨盤臓器脱)の徹底解説

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肛門科の手術後に起こりうるトラブル3 (腫れ)



肛門科の手術を行った場合、術後には誰でも傷周辺に多少の腫れが起こります。
これは肛門科の手術に限らず、全身どこの手術であっても同じです。

術後の腫れは、正常の生体反応なのでなくすことはできません。

ほとんどの腫れは一時的なものであり、術後1〜2ヶ月くらいで軽快します。
しばらく待っても腫れが改善せず気にする人に限って、追加の切除を行うことがあります。

赤ちゃんの肛門と違って、成人の肛門は多少凸凹や皮膚のたるみがあるのが普通です。完璧なツルツルの肛門を目指そうとすると、かえって弊害が起こります。


痔核術後の肛門狭窄1 内痔核だけであれば、術後に腫れることはあまりない。
痔核術後の肛門狭窄2 外痔核成分が多いケースに手術を行うと、この「腫れ」がよく起こる。

女性の方が外痔核成分が目立つケースが多いので、術後の腫れは女性に起こりやすい。
痔核術後の肛門狭窄3 術後に腫れが生じた状態。

「腫れ」は手術の刺激による生体の反応でもあるので、完全になくすことはできない。
痔核術後の肛門狭窄4 ほとんどの腫れは一時的なものであり、術後1〜2ヶ月くらいで縮小してわからなくなってくる。
痔核術後の肛門狭窄5 術後しばらくしても腫れが改善せず、気になる場合に限って、局所麻酔で追加切除すればよい。

これは3分くらいの外来処置で簡単にできる。
痔核術後の肛門狭窄6 「赤ちゃんの肛門」のような、デコボコのない完璧にきれいな肛門を目指すと、かえって弊害が起こる。

きれいな肛門を目指して、腫れそうな場所をたくさん切除しすぎてしまうと・・・
痔核術後の肛門狭窄7 肛門がせまくなってしまうリスクが生じる(肛門狭窄)。

肛門狭窄になってしまったら大変。

肛門を広げる処置(ブジー)を行うか、最悪の場合肛門を広げるための再手術が必要となることがある。

だから、術後に肛門が狭くなるくらいなら、多少腫れたほうがはるかにマシ。


(解説)

この「術後の腫れ」は、日常的に肛門科の手術を行っている医師であればだれでも悩まされた経験があります。

外痔核成分が多いケースに手術を行うと、この「腫れ」がよく起こります。
内痔核だけであれば、術後に腫れることはあまりありません。

女性の方が男性より外痔核が生じやすく、さらに女性の方が皮膚が薄くて腫れやすいため、女性の痔核根治手術後にこの腫れの問題が起こりやすくなります。

看護師などの職業の人を除けば、一般の方が他人の肛門を見る機会はありません。銭湯や温泉でも他人の肛門は見えません。
一般の方が他人の肛門を見る唯一の機会が、「女性が自分の子供の世話をする時」です。
赤ちゃんの肛門は、ツルツルの完璧な形をしています。
そのため、「肛門はまったく凸凹がなくてきれいなのが正常なのだ」と思っているのはたいてい女性です。

また、出産経験のない若い女性の場合には、「自分の体はすべてきれいで完璧でなければならない」と思っている方が多く、こういった方は「ほんの少しの肛門の出っ張りも許せない」と考えているようです。
「体は普通に動いて健康であれば十分」と思っている大多数の男性とは、まったく考え方が違います。


これらのもろもろの理由から、「術後の腫れ」を訴える方は、女性に圧倒的に多くなります。

実際には、成人の肛門は多少の凸凹や皮膚のたるみがあるのが普通です。
何万人もの肛門を診察してきた自分が言うのですから、これは間違いありません。


術後の腫れは、手術の刺激に対する正常な生体反応でもあるので、完全に予防することはできません。

ベテランの医師であれば、どのような場合に腫れが起こりやすいかを知っており、また腫れを最小限にするための方法を心得ています。
そのため上手な医師であればひどい腫れをおこすことはまれなのですが、それでもどうしても多少腫れるケースは存在します。


ほとんどの腫れは一時的なものであり、術後1〜2ヶ月くらいで軽快して気にならなくなります。

腫れが残ってどうしても気になる人に限って、術後2〜3ヶ月くらい様子をみてから局所麻酔で切除することがあります。
これは外来処置で3分くらいで簡単にできる処置です。


痔の術後に腫れてしまった場合、「どうして手術のときにぜんぶ取っておいてくれなかったのですか?」と責められることがあります。
そうしてあげたかったのはやまやまなのですが、なかなかそうもいかない事情があるのです。

痔は良性の疾患であり、さらに肛門はデリケートな臓器でもあるので、手術は「必要最小限」に行うのが原則です。

この原則を守らずに、ツルツルの完璧な肛門を目指してたくさん切りすぎてしまうと、今度は肛門が狭くなってしまう危険があります。
腫れただけならそこを切除すれば簡単に治せますが、肛門が狭くなってしまうと簡単に治すわけにはいきません。
再度入院して、肛門を広げる大手術が必要となるケースもあるのです。

そのため、「肛門が狭くならないように」しつつ、「なるべく腫れないように」バランスのとれた手術を行う必要があるのです。

手術を行う医師は、「肛門が狭くなるくらいなら、多少腫れたほうがまだマシ」と思っています。

狭くなるよりも腫れの方が、対処するのは簡単で将来のダメージも残りませんから。



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