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直腸瘤の経膣的術式いろいろ


直腸瘤の経膣的術式には・・・

@挙筋縫縮術
A直腸膣隔壁欠損部修復術
Bメッシュ手術(TVM手術) 
などがある。

それぞれの術式の特徴と、その変遷のいきさつについて解説する。

※自分の知識の整理を目的としたマニアックなページなので、興味のある方だけどうぞ。



初期の直腸瘤の経膣的手術は、肛門挙筋を縫い縮めて直腸と膣の間に壁をつくる方法で行われていた。
(後方膣壁縫縮術:posterior colporrhaphy)

この方法は筋肉を縫合して補強を行うため、術後の性交障害(痛み、違和感、膣が狭くなるなど)が起こりやすいという欠点があった。

この性交障害は、縫縮した筋肉の萎縮や瘢痕化が原因で生じると考えられている。



上記の後方膣壁縫縮術の欠点が認識された結果、次に直腸膣隔壁欠損部修復術(site specific repair)が広く行われるようになった。

この方法は後方膣壁縫縮術と比べて性交障害の発生頻度が低く、再発率は挙筋縫縮術とあまり差がないという報告が多かったため、この方法が後方膣壁縫縮術にかわって広く普及するようになった。


直腸瘤では、直腸と膣の間にある丈夫な膜(直腸膣隔壁)が破れて、その損傷部位から直腸が脱出してくる。

この損傷部位は、左図のように人によって様々である(図の太いラインが損傷しやすい部位)。
この直腸膣隔壁の損傷部位を見つけて縫合するのが、直腸膣隔壁欠損部修復と呼ばれる術式である。


この直腸膣隔壁欠損部修復術は、「性交障害が起こりにくい」という点では後方膣壁縫縮術より優れていたのだが、治療成績には限界があり、どうしても一定の割合で再発が認められた。 なぜか?

まず、直腸膣隔壁欠損部修復術を行おうとしても、実際には直腸膣隔壁が損傷している部位が分かりにくいことが多いというのが第一の理由である。

TVM手術などの骨盤臓器脱の手術を行うときに実感することだが、直腸と膣の間にある直腸膣中隔という膜は、膀胱と膣の間にある膀胱膣中隔(恥骨頚部筋膜)という膜に比べると薄くて分かりにくいことが多い。

なんとかその薄い膜を見つけて損傷部位を縫合修復しても、高齢者で組織が弱っていたり、肥満者で腹圧がかかるような場合には、どうしても一定の割合で縫合した部位が裂けて再発してしまう。

また修復した部位がうまく治ったとしても、他の場所が破れることで直腸瘤が再発することもあるわけである。



上記の直腸膣隔壁欠損部修復術にまつわる問題点を克服するために、直腸膣隔壁を縫って修復するのではなく、直腸と膣の間にメッシュを留置して、全体的に覆って補強する方法(TVM手術)が行われるようになった。

このメッシュを用いた方法は、損傷部位に関係なく画一的な修復が行えるし、直腸膣隔壁が弱い症例や腹圧が高い症例でも問題なく補強が行えることになる。

この治療法進化の経緯は、そけいヘルニア(脱腸)の治療法の進化とよく似ている。
現在ではそけいヘルニアの手術は、ほとんどの場合メッシュで行われるようになっている。



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